断絶という言葉を使うまでもなく、ある命題の指す対象について、人間は他者とその正確な意味を共有し得ない。というか、原理的には自分自身すら正確な意味など掴めようはずもないのだけれど。
 言葉だけを継ぐというのは、だから或る主張の外殻だけを渡すような行為でしかない。だがそれでも、己の裡から引っ張り出してきた思想の輪郭だけだとしても、それが他者の思想体系の中で意味を与えられて新生する様を見るのは、やはり嬉しいものだと思った。