「オタクがキモいのは事実なんだから自重すべき」という言説を見るにつれ、こういうことを言う人の中に、「キモさ」というものを絶対的な属性として見ている人がどれだけ含まれてしまっているのだろうか、と考えてげんなりする。
 無論として、キモさを内包する者なんていない。この種の属性は観測されて始めて生まれるものだからだ。ここで、気持ち悪いという感情を誘起せしめる特徴を持っているものはキモさを内包すると言ってよかろう、と主張することは出来るが、その場合は観測者の傾向とその数が問題として立ち上がってくるだろうので、いずれにせよ不可能だと言ってしまって良いように思う。このように不確かな特徴付けを、さも所与のように受け入れ、そして周囲にも強要するというのは、端的にねじ曲がった敗北主義であると言わざるをえまい。
 もちろん、オタが気持ち悪がられていない、なんてことを言いたいわけではないし、戦略的にそこら辺を自重するよう戒める言説に異を唱えたい訳でもない。ただ、思考停止した敗北主義者が広義の味方陣営にいると目障りどころか有害ですらあるので、お前らこそ自重しろよ、と言いたいのだ。そこで思考停止するのは、賢さの証左ではない。