「イングヴェイといえば速弾き」だとか、「メシュガーの売りは変拍子」だとか、「オリジンのブラスト速度は非人間的」だとか。何か尖ったものを持つアーティストというのは、その一要素を以て魅力の大部分を成しているかのように語られることがある……と感じます。そして、その評価自体が妥当かどうかは置いといて、そういう紹介の仕方ってのは乱暴ではあるけれども、門外漢や初心者にとっては非常に解りやすいものであるのも事実なんだよなあ……というようなことをつらつらと考えてました。
 これは何も音楽に限った話ではなく、「泣ける物語」「燃えるアニメ」「哲学的な小説」などなど、ざっくりとその作品に単一の属性を付与した評価一般についても言えることで。
 一つの作品が一つの見所しか持たないというのは多分あんまりあることではなく(むしろそういう端的に奇形なものを創ろうと腐心するクリエイターとかいそうなもんだなーとか思うんですが)、いやまあこんな迂遠な言い方をしないで「面白さって一言ですべて言い表せるもんじゃないよね」と言ってしまえば大方の同意は得られるんじゃないかと考えます。作品は総体でもって評価したほうがきっとシアワセになれる。
 
 でも、全く予備知識のないジャンルの海に放り出された時、「こういう楽しみ方があるよ」って指針は非常に役立つものだとも思うのです。
 偽史だったり、不正確な解釈だったりと、きっと問題を孕んだ手引きではあるのでしょうし、作品を楽しむ支障にすら成り得るものでしょうが、しかしその人が自分の価値観でもって作品を己の中に位置づけられるようになるその瞬間までは、きっとポジティブな役割を果たしてくれるはず。
 
 ……などと、自分の拙すぎる脳味噌から捻り出されたあんまりな推薦文句の山を思い返しつつ言い訳を拵えてみるなどした訳です。ああ、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。