深夜、野犬の群れのような声を聴いた。不思議なことに、その声は遙か遠くからやって来て、家の近くを通り、反対の方角へと抜けていくのだ。
 ―――という話をしたら、それは渡り鳥だよ、と母に教えられた。開発が進むにつれて彼らの飛ぶ道筋が年々変わっているのだという。確かに、あの声を初めて聴いたのはつい最近のことだ。……どこか厭な後味の残る話ではある。