シン・ゴジラの感想とかまともに書いてなかったので実感を裏切らない/あんまりネタバレにならない範囲で。
 日本政府の面々が序盤こそ現実的な無力さを披露しつつ、死を前にして勇敢に/有能に戦い抜くようになる、という鮮やかな変化そのものが大変にリアルであると感じる。むろん変化を経た後の有能な姿に日本人の底力がどうこうとか日本政府は実はとかそういう話がしたい訳では毛頭なくて、人間はある種の逃れられない絶望に直面してしまった時、たまさか重い責任を負う立場であったというだけで英雄的な資質を発揮できてしまうのだ、という身も蓋もない人間観の反映された(ように僕にはみえた)「成長」の描写に心底生々しいものを感じた、ということ。能動的に動きまわり、飢えず眠らず破壊と放射能を撒き散らす絶望の化身を前にして、為政者たちは容易く英雄になってしまう。現実が虚構に塗り潰される。虚構の敷いた物語を生きる者になってしまう。そういう世界観。
 
 あとまあ、ゴジラほどの絶望に触れない限りああならないよね、という主張に見えるのでどっちかというと日本政府disっぽく見えるとゆーのはあって。なんやかんや大震災が局外者の世界を何も変えなかったことなどを庵野秀明はどんな気持ちで眺めていたのだろうな。