ATBの話の補足。素朴に把握すると基本的なATBというのはターンという時間単位の長さをキャラ毎に変化させつつ/コマンド選択の最中にも時間を流すことで行動順にある程度のランダム性を加えるためのシステムだとみることができる。で、そのランダム性が目に見える形で発現するにはATBバーの溜まる速度に極端な差がある(殊に、遅い方に広く分布する)か、或いはプレイヤーのコマンド選択が小さくない時間を都度消費するものであるかする必要があるんだけど、前者は戦闘の快楽を極端に削ぐ要因たりうるし、後者はもちろんライブラで弱点割れば同じ技を叩き込み続けるのがFFであるからして、あまり期待できるものではない(ここらへんが最もうまく行ってなかったのがFF9ですね)。時間というリソースは結局、最も効率のよい形で消費されることになり、そこでは戦闘はすばやさの値に応じて単位時間あたりの行動回数が異なるターン制バトルとして単純化されてしまう。というのがまあベタな解釈かと思う。
 そこへいくとFF8の特殊技というシステムは非常によくできていて、発動要件が「ターンが回ってきた際に低確率でたたかうコマンドが特殊技に変化する」というものになっている。能動的な発動のためにはひたすら△ボタンを連打してターンをスキップする必要がある、つまり、リアル時間を能動的に捧げる必要がある。能動的に、というのが圧倒的に重要な部分であって、これがたとえば「時間経過すると勝手にたたかうが特殊技に変化する」などといった仕組みであれば、そこにはストレスしかなかっただろう(必殺剣を思い出した貴方。完全に正しい連想だ)。実質的に起きていることは同じであっても、そこには無限の隔たりがある。その感情操作の巧みさをこそ、戦闘のデザインと呼びたいと僕は思う。いやFF8の特殊技がどこまで意識的に作りこまれたものだかは知らんのだが。偶然の産物っぽくはあるしな……。